FC2ブログ

小説タッチ「価値観に勝とうぜ!(全5回)」第四話

  • 2009/03/27(金) 01:04:40

 ☆ ☆ ☆
第四話
〇無 と 空

Nちゃんが、はなしをつづけはじめた。
「おKぇも、知ってるとおり、今の部署にエグゼクティブリーダーで抜擢されたとき、ほんとに嬉しかった。
それまではただの明るいだけのおっちょこちょいのOLだったから。
あの3年まえ、毎日、仕事してるのがほんとに楽しかったわぁ。
男もいたし・・・。
でも、今やってるプロジェクトを始めるきっかけとなった、去年のプレゼンの日に・・・
会議が終わったあとで食堂にいったとき、専務とハチあって、一緒のテーブルでご飯を食べたのょ。
そのとき、専務にさりげなく言われたのょ。

:いやぁー、君のさっきのプレゼンの姿をみて、小学校のとき、弁論大会に出場したときの自分のことを思い出したょ。オレもあんな感じだったのかなぁ:って。

わたし、けっこう、それショックだった。
だって半年も前から、練りに練って練りあげた企画だもん
*価値観に勝とう*わぁ。
それを、わたしを大抜擢してくれた張本人から聞いて、わたしが企画の中心にした価値観って、結局、わたしの価値観だから、それが小学生の発表会レベルだって言われた気がして。
あの日から、このプロジェクトを何がなんでも成功させなきゃって思った。
大成功させて、専務に、大人の仕事として、わたしはちゃんとやってますってことを認めてもらおうとしちゃったみたい。
その企画が通って、それを 職場で進めるうちに、 このプロジェクトは、価値観を取りあげた企画だから、創る側、仕掛け人となるわたしたちみんなの価値観を合わそう、合わそうってなっていったと思う。
だって、みんな 映画のはなしとかしてるし ダラけて みえちゃうんだもん。
わたしだけが 一生懸命やってるって気になって、 結局、わたしの企画だから わたしが全部ひとりでやる覚悟がないとって思っちゃうのょねぇ。
そりゃ、みんなだって 一生懸命 やってくれてるんだろうけど、わたしには、それがね、やっぱ職場にいると 伝わんなぃ。

わたしの 明るさかぁーっ。
そういや、ここしばらく、笑ってないなぁーわたし」。
一鶴は チラッと Kちゃんをみた。
Kちゃんは Nちゃんが見事に自分の心の窓を、自分で開き、すなおにはなす姿を目の当たりにしたことで、目にいっぱい涙をためていた。
一鶴がしずかにいった。
「よかったね、いい時間になって」と。

Nちゃんも Kちゃんの顔を見て
「おげぇー(おKぇ)、あ"り"ば ど う" ご め"ん"」といいながら泣きだしてしまった
それを見ていた一鶴は
「うわぁー なんじゃ、こいつら、ぶっさいくな顔して泣きやがってほんまー」と最低なことを思っていた。
泣いてたKちゃんがキッとヤカラの方に振り向いた。
ヤカラが心の中の声をつかって言った。
「うそやんかぁ、これも お父さんに言うことっちゃうでぇー。がんばって今から も一つ 語るからそんなに怒りなやぁー」と。

一鶴は、すまし顔とすまし声にもどし
「うん、今、しっかり 泣いておきなょ。で、耳だけ貸してね。
もぅ一つ、無 と 空 のはなしをしておこうかな。 今、目の前に Nちゃんが来たときに もってた 価値観が もぅ、今は無い よねぇ」
すると Nちゃんも ハっとなった。一鶴はそのしぐさを確認してはなしをつづける
「無い けど あるんだょね まだ Nちゃんの体の中にあの価値観の世界が。
これを到達された状態っていうんだけど、別に消滅したわけじゃないわけ。
つまり 無い ことが 「ある」ってこと、存在の在と書いて「在る」ってことね。
これは、人間様は、ヤケをおこして、
もぅ、わたしには何にも無い!
という言い方をするときって、自分が空っぽになった感じ、あの恐れに似た感覚とは ちょっとちがうよね。
さらに言うと
無いってことが在る世界無いってことが起こる世界
なども含んで「無」なわけ。
それに対して 空気の「空」は、確かに人間様の目に見えない。
だけど、空気は確かに「在る」。
目には見えないけど確かに在る世界
死んだおじいちゃん、おばあちゃんの声を、
今、生で聞くことができ無いけど、
今、自分の耳の中に、おじいちゃん(おばあちゃん)の声が、生身の自分に聴こえることが在る世界、
も含んで「空」なわけ。
これ、今、あたまで理解しようとしないで、
今のNちゃんのすなおな心の状態なら、耳にだけ集中してれば
いつの日か あのとき、ヤカラが 言ってたことって、このことだったのかなって感じられると思う。
今、解らせようとする価値観が オレに無い、価値観でもって、今はなしをさせてもらってるから安心してて、あとはNちゃんがあしたから、おっちょこちょいのわたしにもどるも良し、あらたなわたしの価値観を宿すも良しさぁ」
Nちゃんは すでに 泣き止み、一鶴のはなしを キラキラした瞳で うっとりしながら聞いていた。
その表情を見ていたKちゃんが とうとう 心の中で 毒づいた。
「なんやねん、その瞳(め)ぇ。なにそれ、うちも だいたい おんなじはなし、前にしたやん。
あんとき、そんな瞳(め)して聞いてたか あんた?
あぁ?えぇかげんにしーや、ほんまぁ
しばくで ほんまに
人が こんだけ 心配してやってんのに ほんま
一回 あんたの頭 かち割って ストローで 血 吸うたろかぁー
ほんで、あんた・!」
さすがの一鶴も 心で言った
「Kちゃん、もぅ そのへんにしとこかぁ、ちょっとコワいょ、Nちゃんより 危険な オーラが ちょびっと 出はじめてるでぇ!」と

一鶴は 魂だけ、魂の世界に飛び込ませ
「あぶなかったぁ。天女のいかりに触れるとこやったぁ。この女、ほんまに、あのおやじあって この子ありやわぁ。人間をもうちょっとで半分絶滅させる気やった。何が 花嫁修行じゃ。おまえみたいなヤツ 夫婦(めおと)の契りが 交わせるかぁ ボケーッ」と魂の世界に逃げ込んで Kちゃんに思ったことを聞かれないようにして 毒づいたあと そっともどってきた。

さすが スペシャリスト!

つづく

次回 最終回 さてさて どうなることやら・・・・(笑)

この記事に対するコメント

この記事にコメントする

管理者にだけ表示を許可する